韓国ではマンションが人気! 独自の保証人制度も話題の住宅事情、日本とどう違う?

日本から韓国まで、飛行機で2時間あまり。時差もなく、外国の中でも身近なイメージのある方が多いのではないでしょうか? そんな“ご近所”の韓国ですが、住宅事情は日本と大きく異なるようです。韓国で人気の住居形態と、その間取りや設備は? お金を預ければ、実質タダで家を借りることができる、韓国独自の保証人制度「チョンセ」とは? 様々な角度から、韓国の住宅事情を探ります。

韓国の住まいの種類

韓国には主に「アパート」「ヴィラ」「単独住宅」「多世帯住宅」「オフィステル」といった住まいがあります。

圧倒的に人気があるのは「アパート」で、日本でいうマンションにあたります。住宅購入者の多くがアパートを購入していますし、ソウルや釜山といった人気エリアには高層アパートが建ち並び、中には100階建ての超高層建築物も存在します。

「アパート」よりも低層(概ね4階建て)のマンションは「ヴィラ」と呼びます。室内のつくりは「アパート」と同様ですが、共有スペースが少なく、「アパート」の方が高級という認識を持つ多いようです。

その他、家賃や管理費を抑えたい方は「多世帯住宅」で暮らします。「オフィステル」は中心部の駅近くで多く見かけるワンルームタイプの住まい。一人暮らしの方や事務所として利用したい方に人気があります。

戸建てよりもマンションの資産価値が高い韓国

ソウル市内など利便性が高い立地は土地価格が高騰していることもあり、「単独住宅」(日本でいう戸建て)をあまり見かけません。

また、一般的に「単独住宅」よりも「アパート」の方が快適性やセキュリティ面が上回っているため、便利で資産価値も高く、投資目的で購入する人も少なくありません。

価値が下がりにくいため、自宅を担保に老後資金を作る融資制度「リバースモーゲージ」の利用者も目立ちます。

賃貸と分譲の間のような位置づけの「チョンセ」

韓国の住まいは、マイホームと賃貸住宅の他に「チョンセ」という賃貸契約があり、一般的に2年契約で、入居時に保証金を一括支払いします。契約期間中は家賃を払う必要がなく、契約終了後に保証金は全額返金されます。まとまったお金が必要になるため、親から借りたり、ローンを組んだりして工面する方が多いようです。

日本人からしてみたら「丸々2年間、無料で家を借りることができるの?」と不思議に感じますが、一昔前までは、この仕組みでオーナーが大きな利益を得ることができました。物件購入価格の5~8割程度の保証金を銀行に預けるだけで、5~10%の金利がつきましたし、住宅購入価格が高騰を続けていたため、しばらく待って売れば売却益も得ることができたのです。

しかし近年は、住宅購入価格も、銀行金利も下落。

満足のいく運用が難しくなり、オーナーサイドが毎月家賃収益を得られる賃貸借契約(ウォルセ)を好むようになりました。チョンセ金は大幅に高騰し、借り主はなければチョンセを支払えなくなってしまいました。若い新婚夫婦など「チョンセを利用したいのに、高過ぎて手が出ない」と悩む方が増えています。

韓国ではまとまったお金がないと家を買えない?

韓国国土交通部の「2014年住居実態調査」によると、韓国で初めて住宅を購入する方の34.8%が30~34歳、24.5%が35~39歳。韓国統計庁の「仕事・家庭両立指標」によると、男性の初婚年齢は32.6歳、女性は30.0歳ですから、結婚後、すぐに住宅を買う方は限られていることが伺えます。

その理由としては、韓国独自の制度が挙げられます。満30歳の誕生日を迎えるまでに約2年間、兵役に就く義務があるため、社会に出るタイミングが日本のように卒業までに就職先が決まるとも限らず、インターンに行ったり海外に行ったりする人もいるため、30歳まで仕事が見つからない人も珍しくありません。

また、まとまった頭金を貯める必要があるため、結婚や出産を機に購入することが、資金面で難しい事情もあります。

例えば、前述のチョンセを利用する場合、一括で支払う必要があります。結婚費用と重なってしまうと、とても払える金額ではないでしょう。

住宅バブルの崩壊を見据えた金融政策

韓国政府は、都市部の不動産価格やチョンセ金が高騰し続ける状況を受けて2017年8月、エリアごとに融資比率(LTV)や返済負担率(DTI)を定める不動産対策を打ち出しました。これにより、都市部で2件以上の住宅ローンを借り入れることが事実上難しくなり、価格の高騰に歯止めがかかると見られています。

その一方で、「高騰しているチョンセの代わりに住宅を購入しよう」と考える、比較的所得が少ない世帯に対しては、融資に対する支援策を講じる動きもあります。

共用施設が充実。街を形成している団地アパート

さて、韓国では「アパート」が人気だとお伝えしましたが、日本の高層マンションと違いはあるのでしょうか? アパートの中でも多数を占める「団地アパート」の特徴として、共用施設の充実が挙げられます。

大手建設会社が手掛けたアパートは特にインフラが整備されていて、敷地内に公園があり、池があり、図書室やコミュニティ室、プールがあるアパートもあり、リゾート感覚で暮らせます。公園に設置された監視カメラの映像は室内で確認できますし、警備員がバイクなどで定期的に巡回していている、安全・安心の環境も人気の理由です。

また、日本のマンションでは宅配ボックスの設置が最近の主流ですが、韓国では管理人が受け取り連絡を入れるシステムが一般的。最近は、玄関前や管理事務所など、届けてもらう場所を選べるようになっています。

2世帯に1基のエレベーターに、ユニットバスが2つ!? 韓国のマンション事情

間取りは3LDK以上が中心。70~80平米だとやや小さめで、100平米(30坪)程度が一般的な広さ。日本と比べて全体的に広めです。日本のマンションとは造りが異なり、各フロア2世帯で1基のエレベーターを使う造りが主流のため、エレベーターラッシュに巻き込まれたり、住戸まで長廊下を延々と歩いたりする必要がありません。

住戸内も、廊下がほとんどなく、玄関ドアを開けると目の前がリビングです。

浴室は洗面室・トイレと一体になった3点ユニットが主流で、広さによっては3点ユニットが2つある家も珍しくありません。韓国では入浴するよりもシャワーで済ませる家庭が多く、時々チムジルバン(スーパー銭湯のような場所)へ行き、入浴と韓国伝統サウナ「汗蒸幕(ハンジュンマク)」を愉しむのが一般的です。日本のように大きな浴槽を入れる必要もないため、リビングに共用のユニットバスを、夫婦の寝室にも小さなユニットバスを設けるなど、2ヶ所に設置している家をよく見かけます。

また、ベランダ以外の全てに床暖房(オンドル)が入っているため、寒い冬も快適。ベランダには窓があり、サンルームのようになっているため、家の中で洗濯物を干せるところも特徴です。最先端のマンションですと、壁の穴にホースを挿すだけで使えるマンション一体型掃除機も設置されています。冬は氷点下まで冷え込む韓国の事情もありますが、快適な住環境がととのえられていると言えるでしょう。

(最終更新日:2019.10.05)
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