住宅ローン【フラット35】が2017年10月1日申込受付分からリニューアルされます。機構団体信用生命保険特約(機構団信)の保障内容が充実すると同時に、年1回の機構団信特約料の支払いが不要になり、機構団信特約料を毎月の住宅ローンの返済に含めて支払うことになります。従来通り、機構団信に加入しなくとも融資を受けられますが、基本的には機構団信付きの住宅ローンになったと言えるでしょう。リニューアル後の特約料負担や保障の内容などをご説明します。
リニューアルのポイントは2つ
幅広い人が利用している住宅ローン【フラット35】が、2017年10月1日から大幅にリニューアルされることになりました。リニューアルのポイントは大きく2つあります。
(1)機構団信特約料の別払いが不要になる(機構団信特約料が実質値下げ)
これまでは、月々の住宅ローンの返済とは別に、機構団信特約料(ローン残高の0.358%)を年1回支払う必要がありました。今後は、機構団信加入に必要な特約料として、【フラット35】の住宅ローン金利に0.28%上乗せされて、月々の返済に含まれることになります。(ただし、今後も機構団信に加入しなくとも【フラット35】を利用することは可能です)
(2)機構団信の保障内容が拡充
これまでの保障範囲は高度障害と死亡でしたが、保障内容が拡充し、身体障害(身体障害社福祉法に定められている1級または2級の障害に該当した場合)についても保障の範囲に含まれることとなりました。
これらのリニューアル内容について、もう少し詳しく見ていきましょう。
機構団信特約料は実質値下げ、しかし金利は実質値上げ
前述した通り、これまで機構団信に加入するには、年1回、ローン残高の0.358%を機構団信特約料として支払う必要がありました。リニューアル後には、【フラット35】の住宅ローン金利に0.28%上乗せされ、月々の住宅ローンの返済に機構団信特約料が含まれるようになります。この変更に伴い、機構団信特約料の負担が軽減されることになります。
借入金額3,000万円、返済期間35年、金利1.12%、ボーナス返済なし、元利均等返済で住宅ローンを借り入れした際、現在の機構団信に加入した場合と、リニューアル後の新機構団信に加入した場合の特約料負担を比較してみましょう。
金利 | ローンの総支払額 | 団信特約料の総支払額 | 総支払額 | |
現在の機構団信 | 1.12%(年1回の特約料支払いあり) | 約3,628万円※1 | 約204万円※2 | 約3,832万円 |
新機構団信 | 1.40%(1.12%に0.28%を上乗せ) | 約3,797万円※1 | 特約料としての支払いは不要 | 約3,797万円(約35万円の負担減) |
上記の表のように、新機構団信のほうが総支払額で約35万円の負担減となっています。詳しくは後述しますが、保障内容が拡充されているので、機構団信の加入を考えている人にとっては、魅力的な制度改変と言えるでしょう。
次に、機構団信に加入しない場合についても見てみましょう。前述したように、リニューアル後も機構団信に加入しなくても【フラット35】を利用することは可能です。ただし、その場合の借入金利は、「新機構団信付き【フラット35】の借入金利−0.2%」となります。
上と同様の条件で、団信に加入せずに【フラット35】を利用した場合についても、現在とリニューアル後について比較してみましょう。
金利 | 毎月返済額 | 総返済額 | |
現在 | 1.12% | 約8.7万円※1 | 約3,628万円 |
リニューアル後 | 1.2%(※) | 約8.8万円※1 | 約3,676万円(約48万円の負担増) |
上のように、リニューアル後のほうが、金利が0.08%引き上げられることとなり、このシミュレーションの条件では、約48万円の負担増になります。改めて、現行の【フラット35】とリニューアル後の新機構団信付き【フラット35】を比較してみましょう。
現行 | リニューアル後 | 変更点 | |
機構団信加入の必要 | 任意 | 任意 | 変更なし |
機構団信に加入に必要な特約料 | 住宅ローン残高の0.358%を年に1回、特約料として支払う | 機構団信特約料として、従来の金利に0.28%が上乗せされ、毎月の返済額に含めて支払う | 機構団信特約料は、0.078%値下げになった |
機構団信に加入しない場合 | 機構団信特約料の支払いはなく、従来の金利を支払う | 機構団信に加入した場合の金利から、0.2%引き下げた金利が適用される | 金利が0.08%の引き上げになった |
変更点をまとめると、リニューアルにより、「機構団信特約料は値下げ」になりますが、実質的には「金利が0.08%値上げ」になるということです。
これは私の個人的な見解ですが、機構団信加入を促すようなリニューアルと言えるかと思います。つまり、機構団信加入が任意なことに変わりはありませんが、実質的に、【フラット35】は機構団信付きの住宅ローンにリニューアルされると言ってもいいのではないでしょうか。
機構団信の保証内容が大幅拡充
次に、もう1点のポイントである、機構団信の保障内容について見てみましょう。これまでとの違いをあげると「高度障害保障」という部分が「身体障害保障」に変わります。また、三大疾病付機構団信を選んだ場合は、これまでになかった「介護保障」もつくようになったという点です。
それでは、「身体障害保障」と「介護保障」について具体的に見ていきましょう。
(1)身体障害保障とは?
これまでの保障範囲が、高度障害保障から身体障害保障に変わることで、次の両方に該当する場合には、保険適用になることとなりました。
・保障開始日以後の傷害または疾病を原因として、身体障害者福祉法に定める障害の級別が1級または2級の障害に該当したこと。
・身体障害者福祉法に基づき、障害の級別が1級または2級である身体障害者手帳の交付があったこと。
これまでは高度障害として、「両目の視力を完全に失う」「言語またはそしゃくの機能を全く永久に失う」「中枢神経系または精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要する」などの状態になった場合に、保険適用とされていました。
リニューアル後は、たとえば「ペースメーカーを植え込み、自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されている」「人工透析を受けており、自己の身辺の日常生活が極度に制限されている」など、身体障害者福祉法に定められた障害等級1級、2級の身体障害者手帳が交付された場合に保険が適用になります。
これにより、従来よりも軽い障害であっても保険の適用範囲が広がったといえます。
ただし、高度障害と身体障害はそもそも違うものなので、現在の機構団信が保障する高度障害の一部については、新機構団信では保障対象ではなくなるものがあります。この点には十分に注意してください。
(2)介護保障とは?
上述したように、三大疾病付機構団信には、その保障範囲としてこれまでになかった介護保障が追加されます。介護保障とは、次のどちらか一方に該当するときに保険が適用されるというものです。
・保障開始日以後の傷害または疾病を原因として公的介護保険制度による要介護認定を受け、要介護2から要介護5に該当していると認定されたこと。
・保障開始日以後の傷害または疾病を原因として、引受保険会社の定める所定の要件を満たすことが、医師による診断で確定されたこと。
これは私の個人的な考えですが、このように機構団信の保障内容が拡充されるのは、さまざまな理由からローン返済ができなくなることで住居を失うことのないよう、国としての配慮を始めたことのあらわれではないかと思います。
なお、三大疾病付機構団信は、新機構団信付き【フラット35】の借入金利(機構団信料0.28%金利上乗せされた後の金利)にさらに0.18%を上乗せすることで利用することができます。また、夫婦で加入するデュエットについても三大疾病付機構団信と同様、新機構団信付き【フラット35】の借入金利に0.18%を上乗せすることで利用可能です。
(参考:スピード審査で、全国の店舗で相談受付可能。 ARUHIフラットのメリットとは)
リニューアル後の【フラット35】の使い勝手は?
全期間固定金利型で返済額が変わらない【フラット35】は、現在のように金利水準が低い状況下では、低金利の恩恵を最大に受けられる住宅ローンとしておすすめしたいものです。
住宅ローンの返済は30年間、35年間といった長期間にわたるもので、将来いつ何が起こるかわからない不安との戦いでもあります。団信はそうした不安やリスクをカバーしてくれるものです。今回のリニューアルによって、機構団信の保障内容拡充は、利用者の将来の不安を取り除くことにつながるため、利用者としてはメリットになると私は考えます。
【フラット35】は機構団信に加入しなくても借りられるという特徴がありますが、すでに生命保険に加入していてリスクはカバーできているという人を除いて、ぜひ機構団信への加入を検討してみてはいかがでしょうか。
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