超低金利の今、安全な運用先として「個人向け国債」の魅力が高い!

日本銀行が2016年2月に導入した「マイナス金利政策」によって、従前、低かった預金金利は一段と下落しました。このような金利情勢のもと、安全性の高い金融商品の中では「個人向け国債」の人気が高まっています。「個人向け国債」とはどんな特徴を持った金融商品で、なぜ人気が高まっているのかを解説しましょう。

日本銀行の「マイナス金利政策」の影響で預金金利は過去最低水準!

2016年2月に日本銀行が導入した「マイナス金利政策」の影響で、市場金利は一段と下落し、金融商品の金利も軒並み下落しました。預金の金利も住宅ローンの金利も下がっています。お金を借りる住宅ローンの場合、低金利は支払う利息の軽減につながるため歓迎すべきことですが、預金金利の低下は、受け取れる利息が少なくなるため好ましくありません。

2017年8月時点でのメガバンクの主な預金金利は以下の通りです。

【メガバンクの主な預金の金利】(2017年8月)

 預金種類  満期  金利
 普通預金  なし  0.001%
スーパー定期(300万円未満)  6ヶ月  0.01%
 1年  0.01%
 2年  0.01%
 3年  0.01%
 5年  0.01%
 10年  0.01%
スーパー定期(300万円以上)  6ヶ月  0.01%
 1年  0.01%
 2年  0.01%
 3年  0.01%
 5年  0.01%
 10年  0.01%

※筆者調べ

普通預金は0.001%。100万円を預け入れておいて、1年間に受け取れる利息は、10円。利息には約20%の税金がかかるため、税引きの利息額はわずか約8円にしかすぎません。定期預金は、満期が短くても長くても、預け入れる金額が少なくても多くても一律0.01%です。通常、満期が長く、預け入れる額が多いほど、金利が高く設定されるはずですが、それができないほどに市場金利が下がっているのです。

「個人向け国債」の人気が上昇! 理由は政府による0.05%の最低金利保証!

「個人向け国債」の発行額が、「マイナス金利政策」導入の翌月、2016年3月から大きく伸びています。2016年3月から12月までの発行額は2兆6,508億円。前年(2015年)同時期と比較して63%増えています。2017年1月から8月までの発行額も3兆4,409億円と、前年(2016年)同時期よりも60%増えています。

増えた理由は、元本が確保できる安全性の高い金融商品でありながら、金利に0.05%の最低保証があるためです。定期預金の金利0.01%と比較し、「個人向け国債」の金利の魅力が相対的に高まっているのです。安全性の高い金融商品を求める人達が、わずかながらも金利が高く有利な「個人向け国債」に資金を振り向けていると考えられます。

「個人向け国債」は3種類。毎月発行され、当初1年間は中途換金できない!

「個人向け国債」は、満期と金利タイプの異なるものが3種類あり、毎月募集され翌月に発行されています。都銀、地銀、信用金庫、信用組合、郵便局、JAバンク、労動金庫、証券会社などが取り扱っているため、身近な金融機関で購入することができます。また、1万円単位で少額から始めることができるのも魅力です。

【個人向け国債(2017年8月募集・9月発行分の場合)】

   変動10  固定5  固定3
 回号  第89回債  第77回債  第87回債
 満期  10年  5年  3年
 金利タイプ  変動金利 固定金利
 表面利率(年)
(税引き後)
 0.05%
(0.0398425%)
 0.05%
(0.0398425%)
 0.05%
(0.0398425%)
 募集期間 2017年8月3日~31日
 発行日 2017年9月15日
 利払日 毎年3月15日及び9月15日
 償還日  2027年9月15日  2022年9月15日  2020年9月15日
 中途換金 発行後1年経過すればいつでも中途換金が可能
※中途換金時に、直近2回分の受取利息相当額が差し引かれます

(財務省HPを元に筆者が加工)

「変動10」は、満期が10年の変動金利タイプで半年に1度金利が見直されます。「固定5」と「固定3」は、満期がそれぞれ5年と3年、固定金利タイプなので満期まで金利は変わりません。

利息は半年に1度支払われます。上表の「個人向け国債」の金利はいずれも年0.05%ですが、利息には税金がかかるため、税引き後の金利は年0.0398425%となります。例えば100万円で「固定5」を購入した場合、簡単に説明すると、その後、半年毎に半年分の利息199円(=100万円×0.0398425%÷2)を受け取ります。そして5年後の償還日(満期)には、購入時に支払った100万円が戻ってきます。

「個人向け国債」の注意点は、購入後1年間は“中途換金”ができないということ。そのため、1年以内に使う予定のお金は使わないほうがいいでしょう。なお、1年経過後は、いつでも中途換金をすることができます。ただその際はペナルティがあります。直近2回分の受取利息相当額が差し引かれてお金が戻ってきます。

先の「固定5」を100万円で購入した例で、2年が経過したあとに中途解約した場合は、直近の2年後と1年半後に受け取った利息398円(=199円×2回)が100万円から差し引かれ、999,602円が戻ってきます。ただ、購入半年後と1年後の利息は受け取っているため、トータルで考えると元本割れにはなりません。この例の場合、100万円+(199円×4回)<受取利息額>-(199円×2回)<ペナルティ>=1,000,398円となります。

「個人向け国債」の金利も、現在の0.05%は最低金利とかなり低い水準です。定期預金よりは高いとはいえ、受け取れる利息額は、微々たるものです。ただ、常により有利な金利で運用できる金融商品を見つける習慣はつけておきたいものです。何の検討もせずに惰性で預金に置いておくのではなく、多様な金融商品の特徴をしっかり理解して見極め、自分に適した有利なものかどうかを判断できるようにしておきましょう。

(最終更新日:2019.10.05)
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