Q.現在預け入れしている銀行が破綻した場合、預金はどうなりますか? また、住宅ローンを借りている場合は、どうなるのでしょうか?(30代/女性)
A.銀行が経営破綻して預金等の払い戻しができなくなった場合には、「預金保険制度」で一定範囲の預金等は保護されます。破綻した金融機関からの借り入れがあれば、預金と借入金を相殺できる場合もあります。
銀行の預金等は、預金保険制度で保護される
預金は、「預金保険法」で定められた「預金保険制度」で保護されています。預金保険制度の運営主体は、政府・日本銀行・民間金融機関の出資によって設立された「預金保険機構」。預金を扱う銀行などの金融機関に預金をすると、預金者・金融機関および預金保険機構の間で自動的に保険関係が成立します。
万一の際の預金保護の方法には、「資金援助方式」「保険金支払方式」の2つがあります。いずれの場合も保護の範囲は同じですが、破綻金融機関の一定の金融機能が救済金融機関に引き継がれる「資金援助方式」が優先されます。
<表1 預金保護の方法>
資金援助方式 | 健全な金融機関が、営業を引き継ぐ形式。 預金保険機構からは資金援助を得る。 破綻金融機関の一定の金融機能(預金の払い戻し、決済サービス等)が、救済金融機関に引き継がれる。 |
保険金支払方式 | 預金者に預金保険機構が保険金を直接支払う方式。 預金は保険金として戻ってくるが、破綻金融機関で利用していたサービスは利用できなくなる。 |
預金保険制度の対象は、国内に本店のある銀行等
預金保険制度の対象は、日本国内に本店のある、預金を取り扱う金融機関です(表2)。ただし、表2の金融機関であっても、海外の支店は、預金保険の対象外です。また、預金を扱う金融機関であっても、外国銀行(日本国外に本店のある銀行)の在日支店は預金保険制度の保護の対象外です。
預金保険制度の対象となる金融機関は、預金保険機構のホームページで確認できます。(※預金保険機構 対象金融機関)
<表2 預金保険制度の対象金融機関>
・銀行(日本国内に本店のあるもの)
・信用金庫、信金中央金庫
・信用組合、全国信用共同組合連合会
・労働金庫、労働金庫連合会
・商工組合中央金庫
原則、「元本1,000万円とその利息」が保護の対象
対象金融機関で利用している預金であっても、すべてが保護されるわけではありません。預金保険制度の保護の対象は、原則として「1金融機関あたり、預金者1人あたり、元本1,000万円までとその利息」です。ただし、当座預金などの「無利息・要求払い・決済サービスを提供できる」条件を満たす決済用預金は全額保護されます。外貨預金などは、金額に関わらず、預金保険保護の対象外です(表3)。
全額保護される預金を除く、保険の対象となる預金等のうち元本1,000万円を超える部分や、保護の対象外の預金等やその利息等は、破綻金融機関の財産の状況に応じ、倒産手続によって弁済金・配当金として支払われることとなるため、一部カットされる場合があります。
<表3 預金保険の対象となる金融商品>
預金などの分類 | 保護の範囲 | ||
預金保険の対象預金等 | 決済用預金 | 当座預金・利息のつかない普通預金など | 全額保護 |
一般預金等 | 利息のつく普通預金・定期預金・定期積金・元本補てん契約のある金銭信託(ビッグなどの貸付信託を含む)・金融債(保護預り専用商品に限る)など | 合算して元本1,000万円までと破綻日までの利息等を保護。 1,000万円を超える部分は、破綻金融機関の財産の状況に応じて支払われる(一部カットされる場合がある)。 |
|
預金保険の対象外預金等 | 外貨預金、譲渡性預金、金融債(募集債及び保護預り契約が終了したもの)など | 保護の対象外 破綻金融機関の財産の状況に応じて支払われる(一部カットされる場合がある)。 |
なお、複数の金融機関に預金がある場合は、保護の範囲はそれぞれ別に「元本1,000万円+利息」となります。金融機関同士が合併した場合には、その後1年間に限り、保護される預金等金額の範囲は、全額保護される預金を除き「預金者1人当たり1,000万円×合併等に関わった金融機関の数+その利息」による金額になります。
ローンは、預金等と相殺できる場合もある
同じ金融機関に預金と借り入れがある場合には、預金者が相殺を破綻金融機関に申し出ることによって、預金と借り入れを相殺できる場合があります。たとえば、借入が500万円、預金が1,500万円あった場合に相殺すると、借入はゼロになり、預金は保護の範囲内である1,000万円が残ります。金融機関への申し出の手続は、預金規定や借入約定等に基づいて行うことになります。
なお、預金規定に「保険事故発生時における預金者からの相殺」に係わる規定があっても、表4のような場合には相殺できません。
<表4:預金等とローンの相殺ができない場合>
【1】相殺の対象となる借入金について、返済済みの場合
【2】相殺の対象となる借入金について、借入約定等の特約により相殺が禁止されている場合
【3】相殺の対象となる借入金が、金融期間の預金等の支払の停止を知ったあとに負担した債務である場合
【4】相殺を行う預金等について、預金保険機構から保険金の支払いを受けている場合、または預金等債権の買取りにより預金保険機構に預金等債権を売渡している場合
【5】民事再生手続において、債権届出期間が終了している場合
経営破綻の心配のない金融機関を利用できればよいのですが、住宅ローンの返済の続く数十年間の経営状況を見通すことは難しいですよね。ご利用中の預金やローンが「万一」の際にはどんな扱いになるのか、預金規定や借入約定などを確認し、ご利用の金融機関の経営状況などのニュースにも注意しておきましょう。
(最終更新日:2019.10.09)