Q.「定期預金よりも得だから」と保険加入を勧められました。貯蓄のために保険商品を利用する際、注意する点はありますか?(30代 女性)
貯蓄のために生命保険を活用することはできますが、預金と同じように使えるわけではありません。特に、中途解約の場合には「元本割れ」になる場合が多いので注意が必要です。自分の貯蓄目的に合った利用ができるか、その他の金融商品に比べても有利かを確かめてから利用しましょう。
お金を貯められる保険とは
貯蓄目的で利用される生命保険商品には、満期金や年金が受け取れる「養老保険」や「学資保険」、「個人年金保険」などのほか、満期保険金はないが保険料の支払いを続けた後に中途解約した場合にはまとまった金額の解約返戻金が受け取れる「終身保険」などがあります。
<表1:貯蓄目的で利用されるおもな生命保険商品>
保険の種類 | 特徴 |
養老保険 | 保険期間は一定で、その間に死亡したときには死亡保険金が、満期時に生存していたときには満期保険金が受け取れる。死亡保険金と満期保険金は同額。 |
学資保険 | 被保険者を子ども、契約者を親などとして契約する教育資金を準備するための保険。子どもの年齢に応じて、満期時や進学時などに満期金や祝い金が受け取れる仕組み。契約期間中に契約者である親などが死亡した場合には、その後の保険料支払いは免除され、祝い金や満期金は契約どおりに受け取れる。 |
終身保険 | 保険期間は一生涯。死亡した場合のみ、死亡保険金を相続人が受け取れる。満期保険金はない。生前にお金を受け取りたい場合は、中途解約して解約返戻金を受け取る。 |
個人年金保険 | 契約時に定めた一定の年齢から年金が受け取れる。年金受取開始前に被保険者が死亡した場合には、死亡給付金が受け取れるが金額は少額。中途解約した場合には、解約返戻金が受け取れる。 |
保険は途中でやめると損。だからこそお金が貯められる?
保険商品の貯蓄目的での利用を検討するなら、まず、いつ使いたいお金なのか、いくらの保険料をどれくらいの期間、払い続けられそうかなどをはっきりさせましょう。ほとんどの保険商品は、短期で中途解約した場合、払った保険料よりも少ない解約返戻金しか戻らないので、短期の運用には向きません。
長く保険料を払い続けるのが難しいなら、元本割れすることのない預貯金での積み立てのほうがよいでしょう。預貯金の場合は、中途解約すると契約していた利息よりも少ない利息しか得られなくなりますが、元本割れすることはありません。一時的に資金が必要になった場合にも、預金なら容易に引き出せますし、積立額を減らして積立を続けることもできます。
一方、保険の場合は「中途解約するともったいないから保険料払い込みを続けよう」と思える、心理的な効果が期待できます。保険で貯めるなら、「頑張れば続けられる」金額の範囲内で保険料を考えましょう。
ほかの金融商品よりも有利かどうかを確認
貯蓄目的で利用したい保険商品が見つかったら、保険会社のHPで試算するなど、、払込保険料に対して得られる金額を確かめましょう。
保険商品の場合、お金の増え方は、「返戻率」で示されます。返戻率とはその保険から受け取れるお金(満期保険金や解約返戻金等)を払込保険料総額で割り、%表示したもののことです。同じような%表示でも、預貯金などの「利率」や「利回り」とは異なります(表2)。
<表2:利率・利回り・返戻率>
名称 | 意味・計算式 |
利率 | 元本に対して支払われる利子の割合を年率(%)で表記したもの。 |
利回り (年平均利回り) |
「運用期間中に受け取れる利子等の合計を1年あたりに換算したもの」の元本に対する割合 |
返戻率 | その保険から受け取れるお金(保険金、解約返戻金等)の払込保険料総額に対する割合 返戻金÷払込保険料総額×100(%) |
したがって、ほかの金融商品と比較するなら、保険商品の「利回り」はどれくらいになるか、あるいは、預金の「返戻率」はどれくらいになるか計算してみて、同じ条件で比べるようにしましょう。
たとえば、総支払額が100万円、運用期間10年、満期時の受取金額が103万円(10年分の利益は3万円)の金融商品の場合は、
・返戻率:103万円÷100万円×100=103%
・利回り:(103万円-100万円)÷10年÷100万円×100=0.3%
となります。
ほかの金融商品に比べて有利な運用ができることが確認できたら、その商品についてさらに情報を集めます。中途解約時には元本以上の金額が受け取れるのか、どのような手続きが必要なのか等、ほかの金融商品より有利な点、注意すべき点を確認しておきましょう。
「生命保険料控除」が適用できれば節税に
また、保険を利用するなら、「生命保険料控除」が適用できれば節税になります。生命保険料控除とは、生命保険料や個人年金保険料を支払った場合、所得税や住民税を計算するときに一定額を所得から差し引くことができる制度で、その分、納めるべき所得税や住民税が少なくなります。ただし、控除できる金額には上限があるので、加入中の生命保険で控除枠がいっぱいであれば、生命保険料控除は受けられません。
このように、生命保険は貯蓄目的で利用することもできますが、利用の仕方によっては預貯金などより有利になるとは限りません。さまざまな条件で試算し、ほかの金融商品とも比較して、有利な条件で利用できるかどうかを確かめた上で利用を検討してください。
(最終更新日:2019.10.09)