「3,500万円の住宅ローンを申し込んだところ3,000万円しか貸せないといわれた」といったように、住宅ローンの融資希望額より少ない金額で融資が承認される場合があります。これを「減額承認」といいますが、金融機関はどういった場合に、どのような理由で減額承認を行うのでしょうか。また減額承認された場合、住宅購入資金が不足してしまいますが、どんな対応策が考えられるでしょうか。
住宅ローンの減額承認とは?
先日、私の事務所へ相談にいらしたお客さまが、次のようにおっしゃっていました。
「気に入った物件が見つかったので、金融機関に3,500万円の住宅ローン融資を申し込んだところ、3,500万円は貸せないが、3,000万円までなら貸せると言われたんです」
このように、住宅ローンの融資を申し込むと、希望金額を融資することはできないけれど申し込みの金額を減らせば審査が通り融資を受けることができるというケースがあり、これを「減額承認」といいます。
では、住宅ローンが減額承認されるのは、どんな場合なのでしょうか?
減額承認は審査で決まるの?
住宅ローンの申し込みを受けた金融機関は審査を行って、融資をしても問題ないか、いくらまでなら融資できるかを判断します。その審査の内容は「借りる人の属性」と「購入物件の属性」の大きく2つに対して行われます。
「借りる人の属性」は、“返済能力がどれくらいあるか”を審査し、「購入物件の属性」は“その物件の担保価値を審査する”と考えればわかりやすいでしょう。
審査の結果、たとえば “この人は3,500万円の融資を申し込んでいるけれど、3,000万円までなら滞りなく返済してくれるだろう”と判断された場合に、融資を不可とするのではなく、金額を減らして融資を承認するのです。
減額承認になる理由はどんなことが考えられる?
では具体的に、減額承認になる理由を、2つの属性から検証してみましょう。
先ほども少し触れましたが、「借りる人の属性」とは、融資をしても滞りなく返済をしてくれるのか、「人」を審査します。その人の収入、勤務先の業績や勤続年数などから収入の安定性などを見ます。また、クレジットカードの利用状況や自動車ローンなどの借り入れがある場合は、過去に返済を滞らせたことがないかといった個人の信用情報が審査されます。
収入が安定していて、信用情報にも問題がないとしても、それだけで融資が承認されるわけではありません。その人にいくらまでなら融資をしていいかという判断が必要になります。
その判断をするための指標として、「返済比率」があります。これは、住宅ローンだけでなく、キャッシングや自動車ローンなどを含むすべての借入金の返済額が世帯年収に占める割合のことです。
【フラット35】の場合、年収が400万円未満の世帯では総返済負担率が30%以下、年収が400万円以上の世帯で35%以下という融資の基準が決められています。これを超えてしまう金額の融資は承認されないということです。
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購入する物件の担保価値以上の借り入れはできない
次に「購入物件の属性」に対する審査ですが、これは購入を予定している住宅の担保価値がどれくらいあるかを評価することになります。
金融機関は、住宅ローンを借りた人が何らかの事情で返済を続けられなくなった場合に備えて、購入する物件を担保に設定します。そして、もし返済ができなくなった時には、その物件を売却して融資したお金を回収します。
そのため、物件の担保価値以上の金額を融資するということはあり得ません。物件を売却しても融資したお金を回収しきれなければ、金融機関は損をしてしまうからです。
ですから、「借りる人の属性」には全く問題はないとしても、金融機関が物件の担保価値を3,000万円と評価したならば、それを超える融資を受けることはできず、最大でも3,000万円までの融資しか受けられないというわけです。
減額承認になった場合の対策は? 希望の住宅を購入しても大丈夫?
残念ながら減額承認になってしまった場合、希望の物件を購入するには、基本的には融資希望額と実際に融資を受けることのできる金額との差額、つまり不足分を自己資金で用意しなければなりません。たとえば、融資希望額が3,500万円で減額承認された融資額が3,000万円の場合、差額分の500万円を自己資金で用意する必要があるということです。
預貯金が多くあるとか、ご両親から住宅資金の援助を受けられるといった場合には、あまり影響がないかもしれませんが、そうでなければ当初の資金計画が狂ってしまうことになります。
その場合、自己資金を準備して希望の物件を購入するのか、それとも減額承認された融資額の範囲内で購入できる物件を選び直すのかを決めなければなりません。
そのためにはまず、なぜ減額承認になったのか、「借りる人の属性」に問題があったのか、「購入物件の属性」に問題があったのか、それとも両方に問題があったのかを金融機関に問い合わせるなどして検証してみましょう。金融機関によっては、なぜ減額承認になったのか、その理由を教えてもらえない場合もありますが、その場合には不動産に詳しいファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
もし、「借りる人の属性」に問題がある場合には、信用情報にキズがあったためではなく、収入や勤務先、勤続年数など、返済能力の部分で金融機関が求める基準に達していなかったと考えられます。
なぜなら、過去にクレジットカードの支払いや携帯電話、スマホ料金の支払いを延滞して、いわゆるブラックリストに名前がリストアップされているといった理由で“問題あり”と判断された場合には、減額承認ではなく融資そのものを受けることができないケースがほとんどだからです。
ですから、たとえば3,500万円の融資希望額に対して、融資額が3,000万円に減額承認されたのであれば、金融機関に3,000万円までの返済能力しかないと判断されたといえるでしょう。であれば、購入物件を見直したほうがよいかもしれません。
また、「購入物件の属性」に問題がある場合、その物件は融資希望額に見合う担保価値がないということです。言い換えれば、3,000万円の価値しかない物件を3,500万円で買おうとしているということになります(話をわかりやすくするために、ここでは頭金については考慮していません)。
どうしてもその物件がほしいのであれば、売り主と値下げ交渉をするのも手ですが、販売価格を下げてもらえないのであれば、その物件はあきらめて他の物件を探したほうがいいでしょう。
他の金融機関で再審査を受けても大丈夫?
さきほど、住宅ローンが減額承認になった場合、希望の物件を購入するには、不足する金額を自己資金で用意する必要があるとお伝えしましたが、他の金融機関で改めて審査を受けるという選択肢もあります。
融資の審査基準は、金融機関ごと独自で異なりますので、可能性が高いとは言えませんが、同じ物件でも他の金融機関では希望通りの融資額を受けることができるかもしれません。実際、この金融機関では減額承認になったけれど、他の金融機関ではすんなりと融資希望額が審査を通ったということもあるようです。
不足分の金額を自己資金で用意することがむずかしいけれども、その物件を購入したいというお気持ちが強いようであれば、他の金融機関で審査を受けてみてはいかがでしょうか。
その場合でも、金融機関が貸してくれる金額と借りていい金額、つまり無理なく完済できる金額は必ずしも同じではないということを念頭に置いて、無理のない借り入れを行うようにしてください。
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