老後の家計には年金以外の収入の柱が必要! その方法をFPが伝授

Q. 家計の収支について、老後も今の生活水準を生涯維持したいと思っています。そのための具体的な方法を教えて下さい。(50代夫婦)

給与に代わる収入の柱を作ること

時期に多少の差があっても、一定の年齢に達すると会社を退職することになります。退職後の生活を支える大きな柱は「年金」と「貯蓄」になるでしょう。しかし、「年金」はあまり期待できませんし、「貯蓄」だけだと安心を得にくいです。

特に生活水準を維持したい人であれば、給与に代わる収入があるといいですね。そうすれば、「年金」「貯蓄」に加えて「収入」という3本の柱で生活を支えることができます。この3つの柱について順番に見ていきたいと思います。

公的年金には頼れない!? 「確定拠出年金」の活用も視野に

厚生労働省によると、公的年金の毎月受給額は、自営業者などが加入する国民年金の被保険者の場合約5万7,000円、会社員や公務員などの場合、平均15万4,000円となっています。この額で、生活水準を落とさないで生活するのはむずかしいのではないでしょうか。

また、将来的には年金受給年齢の引き上げや、減額も有り得るかもしれません。今までは公的年金が退職後の収入のメインであり、足りない部分を貯蓄で賄う、というのがスタンダードでした。

しかし、これからは、公的年金を大黒柱とするのはむずかしそうです。 公的年金に頼れないのは残念ですが、それを嘆くよりも、自分で年金を用意するほうが建設的です。“自分で作る年金”と言われる「確定拠出年金」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

「確定拠出型年金」には企業型と個人型があり、公務員や主婦の方を含め、ほとんどすべての人が加入できます。内容は資産運用になるため、一定のリスクはありますが、掛け金が控除の対象になりますし、受取時にも税制優遇があります。ただし、いくつか注意したい点がありますので、まとめておきましょう。

【確定拠出年金の注意点】
1.運用成績によっては年金の受取額が減る
2.原則60歳まで途中引き出しができない
3.運用次第で年金額が変わるので、受取額がはっきりしない
4.転職時は持ち運べるのが基本だが、勤続年数が3年未満の場合は、持ち運びできない可能性がある
5.加入者ごとに管理費がかかる

こうした注意点はありますが、確定拠出年金は税制優遇がある分、通常の資産運用より利益を上げやすいと言えます。資産運用を始めるならば、確定拠出年金を検討してみてください。

【参考記事】個人型確定拠出年金「iDeCo」ってなに? メリット・デメリットは?

貯蓄と資産運用は併用しよう。NISAや保険の活用もアリ

「現金」は、急な出費に備えることができる頼もしい存在です。物価上昇時には相対的に価値が下がる可能性がありますが、元本保証という点からは安全性が高く、一定額用意しておきたいですね。

「貯蓄」は、できるだけ早い時期から貯めていくことがポイントとなります。毎月少しずつでいいので、「絶対に手を付けない資金」として貯めていきましょう。ただ、既に退職まで間がなく、今から貯蓄をしても大きな額にならないという人もいらっしゃることでしょう。そうした場合、持ち家にお住まいであれば、コンパクトな家への住み替えも現金を作るうえで有効です。

また、ただ貯めるだけではなく、「資産運用」も取り入れたいところです。運用を行うならば、年間120万円までの利益が非課税になるNISAを活用してみてはいかがでしょうか。しかし、既に確定拠出年金を活用しているのであれば資産運用は控えてもいいかもしれませんね。

また、運用はどうしてもしたくない、という人であれば「保険」に加入するという手段もあります。掛け捨て型ではなく、貯蓄的性質を持つ「個人年金保険」や「終身年金保険」などならば、資産運用的な効果を得ることができるからです。ただ、保険を選択した場合も、結局は保険会社を通じて間接的に運用を行っていることになりますので、そのことは頭の片隅に置いておきましょう。

「資産に働いてもらう」ことで収入を確保する

退職後に収入を得る方法としては、「同じ会社で再雇用を受ける」「新しい職場を探す」というのが一般的かもしれません。体力的に無理のない範囲で働くのであれば、健康面でもいい刺激になりそうです。

自分で働くのももちろん有効ですが、「資産に働いてもらう」という方法もあります。一戸建ての持ち家であれば「賃貸併用住宅への建て替え」、家を子どもに遺す必要がない人であれば「リバースモーゲージ」も有効です。それぞれの主な特徴は以下のようになります。

(1)賃貸併用住宅

賃貸併用住宅とは、自分の住まいの賃貸スペースを設けた住宅のことです。たとえば、1階部分には賃貸用のワンルームを何戸かつくり、2階、3階は自分の居住スペースにするような住宅です。空室リスクや管理コスト、そして建築費の負担はありますが、入居者が見込める立地であれば賃貸収入を得ることができます。ただし、将来売却する際、賃貸併用住宅は需要が限られているため、買い主を探すのが難しいかもしれません。

【参考記事】マイホームで稼ぐ!? 「賃貸併用住宅」のメリットデメリット

(2)リバースモーゲージ

これを利用すると自宅を担保に金融機関から融資を受けることができます。生存中に返済の義務はなく、居住者が亡くなった後、遺族などが不動産を売却し、その売却益で一括返済をするという仕組みです。金融機関によって対応が異なりますが、基本的に一戸建て・マンションどちらでも利用可能です。また、融資には審査があり、担保価値が一定以下の場合は借り入れできない可能性もあります。

賃貸住宅で暮らしている場合、持ち家に働いてもらうことはできませんが、不動産投資を始めることはできます。もしも興味あるならば、融資を受けやすい勤続中に始めるのがおすすめです。また、不動産投資は失敗してもすぐに方向転換することが難しいため、物件選びは慎重に行いましょう。

老後の家計がどうなるのか、多くの人が気になるところでしょう。どんな対策をとるにせよ、1つの方法に依存するのは危険です。家計が潤沢になるよう、複数の方法でアプローチし、老後の生活を守っていきましょう。

(最終更新日:2019.10.05)
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