2018年から「積立NISA(少額投資非課税制度)」がスタートします。この制度は、従来あるNISAよりも非課税投資枠が縮小する代わりに非課税期間が長くなり、また、定期的に定額で投資をする積み立てが条件となります。今回は、長期的に財産を形成したい20~30代向けの積立NISAの特徴を解説しましょう。
従来のNISA(少額投資非課税制度)は長期投資には向いていない
2014年に始まったNISA(少額投資非課税制度)は、20歳以上の個人投資家のための税制優遇制度です。金融機関にNISA口座を開設し、毎年120万円までの投資信託や上場株式等への新規投資をすると、投資をした年から最長5年間、その投資から得られる収益に税金がかからない仕組みで、投資可能期間は2023年までの10年間となっています。
たとえば、2017年中に120万円で投資信託を購入したとしましょう。その後この投資信託が値上がりした場合、5年後の2021年の年末までに売却するか、それまで保有し続ければ収益に税金がかかりません。仮に投資信託の保有額が200万円にまで値上がりした時点で売却した場合の収益は80万円ですが、NISA以外の通常の口座では、この収益80万円に約20%の税金がかかるため収益の手取りは約64万円です。しかしNISAでは収益80万円のすべてが手取りになります。NISAは、このような大きな税制優遇があるため、効率的に財産形成ができる仕組みなのです。
ところで、資産運用のポイントは「分散投資」、「長期投資」、「積立投資」と言われています。この3つを組み合わせて運用すれば高い確率で収益を得ることができるとされています。
従来のNISAでは、「分散投資」と「積立投資」は、投資家が意識すれば実践することができます。「分散投資」については複数の資産を組み合わせて運用するバランス型投資信託などを購入すれば可能ですし、「積立投資」についても多くの金融機関が提供している毎月定額で運用商品を購入できる方法を選択すれば行えます。しかし、「長期投資」については、非課税期間が最長5年と決まっているため、「5年の間に儲かった時点で売却しよう」という意識が働きがちで、10年、20年などの長期投資がしづらい仕組みになっています。
「分散投資」・「長期投資」・「積立投資」を実践しやすい積立NISA
2018年からスタートする積立NISAは、非課税期間が最長20年間となり、投資可能期間も2018年から2037年の20年間になるため「長期投資」がしやすい仕組みです。また、投資商品は、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託に限定されるため、投資家が意識しなくても「分散投資」が行えます。さらに、運用方法は定期定額投資に限定されて「積立投資」しかできなくなります。つまり、積立NISAを活用すると資産運用の3つのポイントが自動的に実践できる仕組みになるのです。ただ、非課税投資枠は年40万円となり、従来のNISAの非課税投資枠年120万円の3分の1になります。
なお、積立NISAは2018年から新しくできる制度で、従来のNISAも引き続き存続します。しかし併用することはできず選択制となります。
【NISAと積立NISAの主な違い】
現行NISA | 積立NISA | |
利用可能者 | 20歳以上 | 20歳以上 |
主な対象商品 | 上場株式等、公募株式投資信託 | 長期の積立・分散投資に適した一定の公募等株式投資信託 |
非課税投資枠 | 新規投資額 年120万円 | 新規投資額 年40万円 |
投資可能期間 | 2014年~2023年の10年間 | 2018年~2037年の20年間 |
非課税期間 | 投資した年から最長5年間 | 投資した年から最長20年間 |
非課税期間中の売却 | 自由 | 自由 |
積立NISAでの資産形成は、20~30代の若年層に適している
積立NISAは、金融庁が若い世代の積極的な活用を想定して制度設計したものです。若い世代の方たちは一般的に、収入が少なかったり、まとまった金額の支出を伴うライフイベントが間近に控えていたり、住宅ローンの返済や教育費の負担があったりして、長期運用ができる投資資金をたくさん捻出するのは困難でしょう。そのため、非課税投資枠を年40万円に抑え(毎月定額で積み立てる場合には月額約3.3万円)、その代わりに非課税期間を長期投資が十分可能な20年間としています。さらに分散投資と積立投資の要素も仕組みの中に取り入れて、収益を確保できる確率を高めているのです。
少子高齢化の影響などで、老後に支給される公的年金の水準は将来的に低下していくと予想されています。若い方ほどその影響を受けるとも言われています。積立NISAは、その方たちにとって、自助努力によるセカンドライフ資金の準備の有効な手段になりそうです。
(最終更新日:2019.10.05)