住宅ローンの無理のない返済比率とは? “借りられる金額”と“借りていい金額”はどう違う?

住宅ローンの返済計画を立てる際に目安となるのが、返済比率です。住宅ローンをスムーズに返済するためには、無理のない返済比率を設定する必要があります。

無理のない返済比率とは、具体的にどれほどの借入額と返済計画で実現できるのでしょうか。

この記事では、無理のない返済比率の目安や、年収500万円での試算結果を紹介します。住宅ローンの利用を考えている人は、ぜひ参考にしてください。

借入限度額と無理なく返済できる金額の違い

住宅を購入する時には、ほとんどの方が住宅ローンを利用します。住宅ローンを借り入れするにあたっては、必ず知っておいていただきたいことがあります。それは、住宅ローンでは「借りられる金額」と「借りていい金額」は違う」ということです。

もう少しわかりやすく申し上げると、金融機関が審査を通してくれる金額(=借りられる金額)と、無理なく返済を続けられる金額(=借りていい金額)はイコールではありません。

住宅ローンの審査に通っても、すべての人が必ず完済できるわけではありません。住宅金融支援機構の「統合報告書2023」によれば、住宅ローンの返済が破綻してしまった人は約3%います。

住宅ローン破綻率の内訳は、「破産更生債権及びこれらに準ずる債権」「危険債権」「三月以上延滞債権」です。

破産更生債権及びこれらに準ずる債権は、破産や社会更生などで経済状況が破綻した状態です。危険債権は経済状況が破綻はしていないものの、返済が困難になっている状態を指します。三月以上延滞債権は要管理債権とも呼ばれ、その名のとおり3ヶ月以上返済が滞っている状態です。

住宅ローン破綻率の近年の推移を見てみましょう。

2020年

3.32%

2021年

3.17%

2022年

3.05%

 

出典:住宅金融支援機構「統合報告書2023」

近年ではやや減少傾向にあるものの、依然として3%は住宅ローン破綻に陥っていることがわかります。

住宅ローンの返済比率とは?

借りていい住宅ローンの金額を知るのは、「返済比率」について知っておくことが大切です。そこでまず、「返済比率」についてご説明しましょう。

返済比率とは、「年収に占める返済額の割合」のことを言います。返済比率を求める計算式は、下の通りです。

返済比率(%)=年間返済額÷年収×100

このときの“年収”は、サラリーマン(給与所得者)の場合は「各種控除前の額面金額」を、自営業の方などは経費等差し引き後の「所得」で計算するのが一般的です。

つまり、収入額を差し引き前の年収で計算してもらえるサラリーマンの方が、自営業の方よりも有利(返済比率が小さくなりやすい)ということになります。

また、“返済額”は年間の総額を用いて計算しますので、ボーナス払いがある場合はボーナス払いも含んだ年間の総返済額で計算します。

住宅ローンの「借りられる金額」とは?

住宅ローンの「借りられる金額」とは、前述の計算式で求めた返済比率が、銀行等の金融機関が独自に定めている返済比率の基準値内に収まっている金額のことをいいます。

【フラット35】なら、年収400万円未満の方の場合で「30%」、400万円以上の方で「35%」を上限としています。また、民間の金融機関の場合なら、年収250万〜400万円の場合で「30%」、400万円以上で「最大35%」などとなっています。

たとえば、他に借り入れのない年収500万円のサラリーマンの方が、審査金利1%で35年の住宅ローンを利用する場合を考えてみましょう。利用する金融機関が年収500万円の方に定める最大の返済比率が35%であれば、借りられる額は次のように求められます。

500万円÷12ヶ月×35%=145,833円…(1)(おおよその毎月返済額)
(1)÷100万円当たりの毎月返済額(2,822円)(※)=51.65…(2)
(2)は100万円当たりの数字なので、(2)×100万円=5,165万円(3)

※35年返済、審査金利1%で100万円を借りた場合の毎月返済額(ボーナス払い無し)は、2,822円

少し補足をしておきましょう。

まず、月の収入に返済比率(35%)をかけると、おおよその毎月の返済額を求めることができます。これが(1)です。この(1)を、100万円当たりの毎月返済額で割ると、100万円の何倍の借入額に対する返済額かがわかります。

その結果、(2)の通り、100万円の51.65倍という結果になりましたので、これに100万円をかけて5,165万円という金額が導き出されます。

なお、「35年返済、審査金利1%の100万円当たりの毎月返済額」は、関数電卓を使って求めるか、住宅ローンの返済額早見表で確認することができます。

計算結果は、5,165万円となりましたが、通常、住宅ローンは10万円単位で融資を行う金融機関が多いので、10万円未満は切り捨てて、このケースでは最大で5,160万円まで住宅ローンが借りられる、ということになり、毎月の返済額は145,807円となります。

住宅は購入後にもお金がかかる

住宅ローンが最大いくらまで借りられるかがわかれば、次の問題は、「借り入れした住宅ローンを毎月きちんと返済していけるかどうか」ということになります。ここで忘れてはいけないのは、住宅を購入すると、住宅ローン返済の他にも負担しなければいけない費用が発生することです。

ここで住宅を購入した後にかかるお金を考えてみましょう。具体的には、次のようなお金が毎月、あるいは毎年必要になります。

(1)固定資産税・都市計画税などの税金

不動産を所有することで「固定資産税」と「都市計画税」が毎年課税されます。土地や建物の面積が大きければ大きいほど、立地が良ければよいほど、建物は新しいほど税金は高くなります。

税金がいくらになるかは、所有する土地や建物の評価額によって異なり、その評価額も3年に一度見直しされ、変化していきます。

たとえば、首都圏の平均的な立地で、70㎡程度のマンションであれば、15万円前後毎年税金として支払い発生します。

(2)管理費・修繕積立金(マンションの場合)

マンションを購入した場合、住宅ローンの返済に加えてマンションの管理費・修繕積立金がかかります。

管理費とは、マンション全体の設備や共有部分を管理する費用を指します。修繕積立金は、経年劣化によってマンションを修繕しなければならないときのために、あらかじめ積み立てておく資金です。

マンションの管理費・修繕積立金は、地域やマンションによって差がありますが、おおよそ1万円~1万7,000円ずつが目安です。たとえば築10年程度の70平方メートル程度のマンションなら、平均的に管理と修繕積立金で2万~3万円程度の費用が毎月発生します。

いずれも、そのマンションを所有する限り払い続ける必要があるので、予算に加えておきましょう。

(3)修繕費(戸建て住宅の場合)

戸建て住宅の場合、マンションのように管理費や修繕積立金を支払う義務はありませんが、老朽化にともなう修繕費は自分で用意しなければなりません。

戸建て住宅は築後10年~15年から屋根や外壁、水回りなどの状態が劣化し、修繕が必要になるとされています。修繕箇所によって費用は異なりますが、場合によっては数百万円の費用が発生することもあります。

修繕が必要になったタイミングで、修繕費用を用意しようとしても難しい場合もあるでしょう。住み始めから月々の金額を決め、積み立てをしておくことがおすすめです。

 

借りていい金額はどれくらい? 年収500万円のケースで試算

住宅ローンの「借りられる金額」については前述の通りですが、これは「借りていい金額」とはイコールではありません。では、実際どのくらいまで住宅ローンを借りてもいいものなのでしょうか。

具体的な金額は、各家庭の収入と支出とバランスによるので、一概には言えませんが、一般的に住居費の目安としては「年収の20~25%」ぐらいが理想的と言われています。ただし、実際には年収が相対的に低い方の方が、年収に占める住居費の割合が高くなる傾向があるため、「年収の30%」ぐらいを住居費が占めている方が多いようです。

ここで言う“住居費”とは、住宅を維持する費用も含まれるので、住宅ローン以外の前述した購入後にかかる費用も含んで考えなければなりません。

そこで、この目安となる住居費の割合と、購入後にかかる費用を参考にして、適正な返済比率と借入額を考えてみましょう。

先ほどの例によると、他に借り入れのない年収500万円のサラリーマンの方が、審査金利1%で35年の住宅ローンを利用する場合に、利用する金融機関が年収500万円の方に定める最大の返済比率が35%であれば、最大借り入れ可能額は5,160万円、その場合の毎月返済額は145,807円でした。

一方、前述した通り、一般的に理想的な住居費の目安は年収の20~25%ぐらいと言われています。理想的な住居費の目安を年収の25とすると、年収500万円の方の場合、毎月の理想的な住居費は、

500万円×25%÷12ヶ月=104,166円/月

となります。

仮に、購入する物件がマンションだった場合、そのマンションの固定資産税等税金が毎年15万円(12,500円/月相当)、管理費と修繕積立金が毎月25,000円かかるとします。この場合、税金と管理費等を合わせた毎月の負担額は、12,500円+25,000円=37,500円です。

毎月の理想的な住居費である104,166円から、この37,500円を差し引いた額が、住宅ローンの返済額に充てられる金額です。

 104,166円-37,500円=66,666円

次に毎月の返済額が66,666円となる住宅ローンの借入額を計算してみましょう。先ほどの例と同様に、66,666円を35年返済、審査金利1%で100万円を借りた場合の毎月返済額(ボーナス払い無し)である2,822円で割り戻すと、

66,666円÷2,822円=23.61

となります。借り入れ額は100万円の23.61倍ということですから、これを10万円単位の融資額に置き換えると次の計算式の通りです 

23.61×100万円≒2,360万円

この2,360万円が、年収500万円の方が借りていい住宅ローンの金額ということになり、返済比率は15.98%となります。金融機関が許容する返済負担率と比べると、かなり少ないことがおわかりいただけるのではないでしょうか。

適正な返済比率はどれくらい?

ただ、これでは融資額が少なくなってしまうため、現実的には住宅を購入することがむずかしくなってしまうでしょう。そこで、現実的な範囲で住居費の年収に占める割合を30%とすると、年収500万円の方の場合、毎月の支払い可能な住居費は125,000円となり、上記と同様の計算をすると、借り入れ可能な住宅ローンは3,090万円となります。このときの住宅ローンの返済比率は、20.93%となります。

この場合、もし、物件価格の100%を住宅ローンで賄うのであれば、物件価格は3,090万円まで、同じく90%を賄う場合の物件価格は3,430万円となります。このように、自己資金をどこまで用意できるかによって購入できる物件の価格が異なってきます。

また、税金や管理費等の金額によっても、適正な住宅ローンの借入可能額は変わってきます。

以上のように、住宅ローンの借り入れ金額を考える際には、住宅ローンだけで考えるのではなく、税金や修繕費、管理費などを含めた“住居費”全体で考えなければなりません。そのため、住宅ローンの適正な返済比率は20%前後、一戸建てのように毎月かかる修繕費や管理費が少ない場合でも、25%以内に抑えておくことをおすすめします。

なお、これから年収が確実に上昇していくという方の場合、現在の返済比率を高めにして借り入れ金額を増やすことも考えられます。ですが、将来的には子どもの誕生や成長に伴う支出なども増えてくるので、そういった場合でも、できる限り返済比率は抑えて、20%~25%以内にしておくのがよいでしょう。

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(最終更新日:2024.05.20)
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