2016年の秋以降、住宅ローンの固定金利タイプの金利水準が徐々に上昇してきました。それまでの数ヶ月は過去最低の水準が続いていたのですが、上昇に転じた背景には何があったのでしょうか。また2017年3月現在の金利はどの程度の水準で、今後はどうなることが予想されるのでしょうか。
固定金利タイプの金利は2016(平成28)年9月から上昇傾向に反転
固定金利タイプの住宅ローンの代表格である【フラット35】の金利が、2016年9月から上昇に転じています。「返済期間21年以上35年以下、融資率9割以下」で最も多くの金融機関が提示した最低金利(下グラフ)を見ると、2016年8月は0.90%となり過去最低を更新しましたが、その後反転して、2017年2月には1.10%にまで上昇しています。
少し過去にさかのぼると、2016年3月は、前月から大きく下落しているのがわかります。その後、やや上下動はあるものの、下落基調で推移して8月に底を打ち、9月は上昇に転じて現在にいたっています。
2016年2月からの「マイナス金利」政策によって大幅に下落
日本銀行は2013年春から物価上昇率(インフレ率)2%という目標を掲げて大規模な金融緩和政策を推し進めてインフレ期待を高め、企業や個人の投資意欲や消費意欲を喚起してデフレ経済からの脱却を図ろうとしてきました。
しかし、当初思い描いたように物価が上がらず、企業収益の拡大、賃金上昇、消費拡大に結びつかないことから、2016年2月の中旬に、追加の金融緩和措置として「マイナス金利」政策を導入しました。
この政策は、民間銀行が日本銀行に預けるお金の一部に手数料を課すことによって、従来以上に民間銀行の資金を企業や個人への融資に誘導し、企業の設備投資や個人の住宅取得の促進を図るものです。
「マイナス金利」によって市場金利は一段と下落しました。預金金利も下がりましたが、ローンの金利も下がりました。
住宅ローンの固定金利タイプは、市場金利のひとつである長期金利(10年国債の利回り)の動向を参考にして各金融機関が金利を決定します。その長期金利が2016年2月下旬以降0%を下回り、マイナスの領域にまで下落しました。
その影響で3月以降、住宅ローンの固定金利タイプは過去最低水準の金利が数ヶ月続きました。
2016年9月から金利が上昇した理由は、日本銀行の金融政策の変更が原因
【フラット35】の金利は、2016年8月を底にして、翌9月からは上昇に転じています。この主な理由には、日本銀行が金融政策に新しい枠組みを導入したことが考えられます。「マイナス金利」政策は維持しながら、長期金利(10年国債の利回り)を0%程度に誘導する政策を追加しました。
その背景のひとつには、国債の金利が下がり過ぎて保険や年金の運用が難しくなる副作用が目立ってきたことが挙げられます。私たちが加入している生命保険や損害保険、公的年金などの資金、また、預貯金の一部は金融機関等によって国債で運用されています。金利がマイナスに落ち込んでこれらの収益が悪化すると、私たちの暮らしにも悪影響を及ぼしかねません。
この新たな政策によって長期金利(10年国債の利回り)の下落幅が縮小し、住宅ローンの固定金利タイプの金利が上昇に転じたのです。
上昇したとはいえ「マイナス金利」政策導入前よりも低い水準
ただ、金利が上昇しているとはいえ、グラフを見てもわかる通り、現在の金利は、「マイナス金利」政策導入前の2016年2月までの金利よりも低い水準です。1年前の2016年2月の金利が1.48%なのに対して、2017年2月のそれは1.10%です。2013年4月以降の約4年間でも現在の金利は低水準です。
日本銀行は、今後長期金利が再度下落するような金融政策は、副作用があることなどから実施しづらいでしょう。また、目標としている物価上昇率2.0%の達成が確かなものになるまでは市場金利を上げるような金融政策も採用しにくいでしょう。現在の金融緩和政策が当面継続することを前提とすると、住宅ローンの固定金利タイプの金利も現在の水準がしばらく続くことが予想されます。
住宅ローンの変動金利(半年型)の金利水準は、ここ数年大きくは変化していません。依然として低金利が続いています。
これから住宅を購入するために住宅ローンを借りようと考えている方は、当面は低い金利水準で住宅ローンを借りることができそうです。
ただし、住宅ローンの返済期間が長期に及ぶことを考えると、市場金利が上昇した場合でも返済プランに影響を受けない金利タイプを選択したいものです。
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